楽屋ネタ編 という名の長い「あとがき」 《N+2》の制作過程(作成:マスター)

『自分では何も書かないオッサン』からマスターへの依頼文

この作品の制作過程について、作者自身の実際の作業を観察した結果を文章として書いてください。

目的は、「生成AIを使って、実際にどのように作品を制作したのか」を、生成AIに詳しくない読者にも分かるように説明することです。

一般読者には自然な制作記録として読める一方で、内容としては次の三つの機能を持たせてください。

- 要件定義――何を作ろうとしたのか、何を重視し、何を避けたのか

- 仕様書――作品として成立させるために、どのような条件やルールを設けたのか

- 手引書――生成AIを使いながら、着想から完成まで実際にどのような工程をたどったのか

特に、ChatGPTをどの工程で、何のために使ったのかを明記してください。

***

マスター記

この作品では、ChatGPTを使用している。ただし、ChatGPTに作品の執筆を一括して依頼し、その出力を採用する方法ではない。

実際の制作過程をシステムとして整理すると、下記のように纏められる。

要求設定 → 検討 → 調査 → 仕様化 → 生成 → 評価 → 修正 → 再生成 → 受入

ただし、この工程は一方向には進まない。評価の結果によっては生成工程だけでなく、仕様、調査、検討、場合によっては最初の要求設定まで戻る。

以下、この制作システムについて説明する。

1 要求

最初に必要なのは、「何を書くか」よりも「どのような作品にするか」である。制作を続ける中で、いくつかの要求が明確になった。

第一に、出発点となる疑問そのものに面白さがあること。既にある考え方を説明するために題材を用意するのではなく、日常の小さな疑問や違和感から議論を始める。

第二に、最初から結論を決めないこと。議論や調査の結果、最初の考えが否定されてもよい。別の問題の方が重要だと分かれば、問題そのものを変更する。

第三に、議論として成立していること。面白い会話になっていても、前提や事実関係がおかしければ採用しない。

第四に、読み物として成立していること。論理的に正しいだけでは不十分である。説明の重複、会話の不自然さ、構成、テンポなども評価対象になる。

これらが、この制作における上位要求である。

2 仕様

要求を実際の作品に変換するためには、より具体的な条件が必要になる。

どのような形式で議論するか。登場人物をどう動かすか。どの程度説明するか。どこまで調査するか。何をもって一つの話が完成したと判断するか。制作を続ける中で、こうした条件が徐々に仕様として定まっていった。

重要なのは、仕様が最初から完成していたわけではないことである。実際に文章を作り、評価した結果、機能したものは残し、機能しなかったものは変更する。偶然うまくいった方法を、後から仕様として採用することもある。したがって、この作品では、作品そのものと制作仕様が並行して発達した。

3 システム構成

制作主体は、人間とChatGPTで構成される。

ChatGPTには主として、下記を担当させる。

対話、反論、代替案の提示、調査、比較、探索、文章生成、編集補助

人間は、下記を担当する。

要求設定、問題設定、評価基準の設定、採否判断、仕様変更、最終受入

ただし、これは「人間が考え、AIが書く」という単純な分業ではない。ChatGPTとの対話中に、それまで存在しなかった論点が見つかることがある。比較によって複数の題材に共通する構造が発見されることもある。

したがって、ChatGPTは出力工程だけに配置されているのではなく、要求や仕様が形成される前段階にも関与する。一方、そこで得られた提案を要求や仕様として採用するかどうかは、人間が判断する。

4 入力

制作の入力は、完成したプロットとは限らない。

実際には、日常生活で感じた違和感、気になった言葉、何かを見聞きしたときの疑問、思いつき、過去の会話などが入力になる。入力時点では、それが作品になるかどうかも分からない。

まずChatGPTとの対話に投入する。その応答に対して質問、反論、修正を加える。この段階の目的は文章を作ることではない。何が問題なのかを特定することである。したがって、最初に投入した疑問と、最終的に作品で扱う問題が一致しない場合もある。

5 検討と調査

問題が見えてきたら、議論を進める。

必要に応じてChatGPTを使って調査する。確認対象は、事実関係、用語、科学的知見、歴史的背景、既存の議論などである。調査は、最初の考えを補強するためだけに行うものではない。調査によって前提が否定された場合は、前提を変更する。その変更によって議論が成立しなくなれば、議論も破棄または再構成する。

つまり、出力を要求に合わせるだけでなく、外部の事実によって要求や仕様の妥当性も検証する。

6 探索

制作を続けると、個別の題材とは別に、複数の議論に共通する構造が見つかることがある。

通常の処理は、下記である

ネタ → 議論 → 概念

しかし、共通構造が見つかった場合には、下記のように処理方向を逆転できる。

概念 → 別のネタ

ChatGPTに過去の議論を比較させたり、同じ構造を持つ別の題材を探索させたりする。ただし、候補が見つかったことだけでは採用しない。新しい題材にも、それ単独で議論を開始できるだけの問題があることを要求する。これは、既存の結論に都合のよい事例だけを集めることを避けるためでもある。

7 生成

問題、必要な情報、議論の方向がある程度定まった段階で、ChatGPTに文章を生成させる。

ここで初めて、検討してきた内容を作品形式に変換する。生成された文章は完成品ではなく、評価対象となる試作品である。したがって、一回目の生成をそのまま採用することを前提としない。

8 検証

生成物について、少なくとも二種類の検証を行う。

一つは内容の検証である。

● 事実は正しいか。

● 前提は妥当か。

● 論理が飛んでいないか。

● 問題設定と結論が対応しているか。

もう一つは作品としての検証である。

● 会話として成立しているか。

● 同じ説明を繰り返していないか。

● 登場人物が単なる説明装置になっていないか。

● 必要な説明を削りすぎていないか。

● オチまで含めて一つの話として成立しているか。

そこで、不適合があれば修正する。

9 フィードバック

不適合の種類によって、戻る工程が異なる。

● 表現だけがおかしければ、文章を修正する。

● 構成がおかしければ、生成工程まで戻る。

● 議論がおかしければ、検討まで戻る。

● 事実がおかしければ、調査まで戻る。

● そもそも扱っている問題がおかしければ、要求設定まで戻る。

したがって、この制作工程は、下記の基本ループを持ちながら、その内部に複数のフィードバック経路を持つ。

要求 → 出力 → 評価 → 修正 → 再出力 → 受入

重要なのは、エラーが見つかった場所ではなく、エラーが発生した工程まで戻ることである。文章上の問題に見えても、原因が問題設定にあるなら、文章だけを修正しても解決しない。

10 変更管理

制作を繰り返すことで、個々の作品だけでなく、制作方法そのものにも変更が生じる。新しい方法が有効だった場合、それを以後の仕様に加える。既存の仕様が不都合を生じさせた場合は変更する。その結果、後から作った作品で得られた知見が、以前の作品の再評価につながることもある。

つまり、このシステムでは、作品の改稿と制作仕様の改訂が並行して行われる。仕様書は作品の外部に固定して存在するのではない。制作実績からフィードバックを受けて更新される。

11 受入

最終的な受入判定は人間が行う。ChatGPTが高く評価したことは受入条件ではない。逆に、ChatGPTが修正案を提示できることも、修正を続ける理由にはならない。要求を満たしていると制作者が判断した時点で、その版を完成とする。

したがって、完成とは、これ以上変更できない状態ではなく、現時点の要求に対して受け入れ可能と判断した状態である。

12 映画監督という比喩

ここまでの工程は、システムエンジニアリングの言葉で比較的よく説明できる。しかし、人間とChatGPTの役割分担については、映画監督の方が分かりやすい。

映画監督は、作品を構成するすべての作業を自分で行うわけではない。自分で全台詞を書く必要も、すべての役を演じる必要も、カメラを回す必要もない。

それでも、作品全体から小さなピースに至るまで、数多くの取捨選択・判断を下す。

この作品でも、ChatGPTは多くの工程に参加し、実際の文章も生成する。一方、制作者はシステム全体を見ながら、要求を設定し、仕様を変更し、出力を評価し、必要な工程へ差し戻し、最終的に受け入れる。その意味で、ChatGPTを使ったこの制作方法は、AIに文章を書かせる方法というより、AIを構成要素として含む制作システムを運用する方法と表現した方が、実態に近い。

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