かぐや姫の人生相談
五人の求婚者
小さなバー。名前は《N+2》。
オッサンがカウンターで酒を飲んでいた。
おねーさんは椅子の上で丸くなっている。
マスターはグラスを拭いていた。
突然、店の床が光った。
オッサン「またか」
マスター「今度はこっちにか」
おねーさん「何か来るにゃ」
光が消えた。
一人の女が立っていた。
オッサン「誰?」
女「かぐやと申します」
沈黙した。
オッサン「本物?」
かぐや姫「何をもって本物とするのでしょう」
オッサン「いきなり面倒くさいの来たな」
マスター「お前が言うな」
おねーさん「どうしたにゃ?」
かぐや姫「相談したいことがあります」
オッサン「人生相談?」
かぐや姫「おそらく」
マスター「何だ」
かぐや姫「結婚したくありません」
オッサン「しなきゃいいじゃん」
マスター「ああ」
おねーさん「解決したにゃ」
かぐや姫「そういうわけにはいかないのです」
オッサン「なんで?」
かぐや姫「翁が、結婚するようにと」
オッサン「嫌だって言った?」
かぐや姫「言いました」
マスター「じゃあ、翁が納得しないのか」
かぐや姫「はい」
おねーさん「それで、どうするつもりにゃ?」
かぐや姫「求婚している五人に、それぞれ品物を持ってきてもらおうと思っています」
オッサン「品物?」
かぐや姫「仏の御石の鉢。蓬萊の玉の枝。火鼠の皮衣。龍の頸の五色の玉。燕の子安貝」
沈黙した。
オッサン「それ、人生相談じゃなくてクエストだろ」
マスター「どこで手に入るんだ」
かぐや姫「簡単には手に入らないものです」
おねーさん「簡単どころじゃない気がするにゃ」
オッサン「で、それを持ってきた人と結婚するの?」
かぐや姫「その方の志を見たいのです」
オッサン「志?」
かぐや姫「どれほど私を思っているのか」
オッサン「じゃあ、目的は志の深さを測ること?」
かぐや姫「はい」
オッサン「仏の御石の鉢を持ってくる能力と、志の深さには、どういう関係があるの?」
かぐや姫は黙った。
マスター「まず五つがどんなものか確認する方が早いな」
オッサン「ちょっと五つともみてみよう」
マスター「全部やるのか」
オッサン「五つも用意したんだから」
***
おねーさん「まず、仏の御石の鉢にゃ」
オッサン「これ、本当に手に入るの?」
かぐや姫「簡単には」
マスター「手に入らなかったら?」
かぐや姫「諦めるのではないでしょうか」
オッサン「偽物を持ってくるかもしれない」
かぐや姫「偽物?」
オッサン「本物を手に入れられないなら、本物だと思わせればいい」
おねーさん「目的が変わったにゃ」
マスター「本物を手に入れることから、合格判定を取ることに変わったな」
オッサン「評価基準を作ると、その基準を攻略する奴が出てくる」
かぐや姫「では、偽物だと見抜けば」
マスター「今度はお前の鑑定能力の問題になる」
オッサン「次。蓬萊の玉の枝」
かぐや姫「それも、簡単には手に入りません」
マスター「本物だとどうやって確認する」
かぐや姫「それは……」
おねーさん「蓬萊まで確認に行くにゃ?」
オッサン「確認できないものを評価基準にすると、本物を持ってくる能力より、本物らしく見せる能力が重要になるな」
マスター「基準があっても、判定できなければ使えん」
かぐや姫「では、火鼠の皮衣なら、本物かどうか分かります」
オッサン「どうやって?」
かぐや姫「火に入れても燃えないと聞いています」
マスター「それなら検証できる」
おねーさん「今度は判定できるにゃ」
オッサン「でも、本物だと確認できることと、それで志を測れることは別だよね」
かぐや姫「あ」
マスター「測定できることと、測りたいものを測っていることは違う」
オッサン「三つ目で、やっと最初の問題に戻った」
おねーさん「次は龍の頸の五色の玉にゃ」
オッサン「龍から取ってくるんだよね」
かぐや姫「はい」
マスター「危険だな」
かぐや姫「私のために危険を冒すのであれば、それだけ志が深いのでは」
オッサン「それ、危険なことをする人ほど高得点になるよ」
かぐや姫「え?」
マスター「評価の仕方が、相手の行動を変える」
おねーさん「無茶をした方が有利になるにゃ」
オッサン「しかも死んだら結婚できない」
かぐや姫は黙った。
マスター「最後」
かぐや姫「燕の子安貝です」
オッサン「どこにあるの?」
かぐや姫「燕の巣に」
おねーさん「高いところに登るにゃ」
マスター「また危険だな」
オッサン「これ、さっきと同じじゃん」
マスター「ああ」
おねーさん「五つあるけど、五種類の試験ではないにゃ」
オッサン「そういうことか」
かぐや姫「どういうことでしょう」
オッサン「五つ並べても、志を五方向から測ってるわけじゃない。同じ問題を何度か繰り返してる」
マスター「偽装できる。確認できない。確認できても測りたいものとは違う。危険な行動を誘発する」
おねーさん「かなり問題のある試験にゃ」
かぐや姫「試験ではありません」
オッサン「もう諦めろよ、そこ」
***
マスター「それより、一つ確認した方がいい」
かぐや姫「何でしょう」
マスター「本当に一人が持ってきたら、結婚するのか」
かぐや姫は黙った。
オッサン「そうだ。それが一番大事だ」
かぐや姫「約束したのであれば……」
おねーさん「したいかどうかを聞いてるにゃ」
かぐや姫「……したくありません」
オッサン「じゃあ、この五つ、何のために出すの?」
かぐや姫「……」
オッサン「全員に諦めてもらうため?」
かぐや姫「そうなのかもしれません」
おねーさん「でも、本当に誰も成功しないと思ってるのかにゃ?」
かぐや姫「成功するとは思っていません」
マスター「なら、拒絶の代わりか」
オッサン「いや、もう一つある」
マスター「何だ」
オッサン「どうしても結婚しなきゃいけないなら、せめて本当にそこまでしてくれる相手を選ぶ。Second best」
かぐや姫「せかんど べすと?」
オッサン「一番欲しい状態が実現できないとき、制約の中で次にいい状態を選ぶ」
おねーさん「第一選択は、誰とも結婚しないにゃ」
マスター「それが無理なら、次善の相手を選ぶ」
オッサン「そういうつもりだった?」
かぐや姫はしばらく考えた。
かぐや姫「分かりません」
オッサン「分からない?」
かぐや姫「誰かが本当に持ってくるとは考えていませんでした。でも、本当に持ってきたなら、どうするのかは……」
おねーさん「決めてなかったにゃ」
かぐや姫「はい」
かぐや姫「では、私は何のために難題を出そうとしていたのでしょう」
オッサン「……分からないな」
かぐや姫「人生相談なのですが」
マスター「分からんものは分からん」
***
おねーさん「一つ聞いていいかにゃ?」
かぐや姫「はい」
おねーさん「どうして結婚したくないにゃ?」
かぐや姫「それは……」
オッサン「月に帰るから?」
かぐや姫は顔を上げた。
かぐや姫「いいえ」
オッサン「違うの?」
かぐや姫「私は、ここにいたいです」
オッサン「でも、月に帰るんだよね?」
かぐや姫「帰らなければなりません」
マスター「帰りたいわけではないのか」
かぐや姫「はい」
沈黙した。
オッサン「俺、勝手につなげてた」
マスター「何を」
オッサン「人間じゃない。だから人間の結婚を嫌がる。だから月へ帰る」
おねーさん「全部別の話にゃ」
オッサン「そうなんだよな。結婚したくないことと、地上にいたくないことは同じじゃない」
マスター「月の者であることと、月へ帰りたいことも同じじゃない」
オッサン「属性から本人の意思を決めてたのか」
おねーさん「本人に聞けばよかったにゃ」
オッサン「そうだな」
かぐや姫「私は月の者です。でも、ここにいたいです」
オッサン「うん」
おねーさん「それなら、今分かってるのはそこまでにゃ」
***
かぐや姫「それで、私はどうすればよいのでしょう」
三人は黙った。
オッサン「難題はやめた方がいいと思う」
マスター「ああ。測りたいものを測れていない」
おねーさん「でも、結婚したくない理由まで、今決める必要はないにゃ」
かぐや姫「分からないままで?」
おねーさん「分からないものは、分からないにゃ」
床が光った。
かぐや姫「どうやら、戻るようです」
オッサン「結局、何の役にも立たなかったな」
かぐや姫「いいえ」
オッサン「そう?」
かぐや姫「少なくとも、五つの品を本当に持ってこられたら困ることは分かりました」
光が強くなった。
マスター「そこからか」
かぐや姫の姿が消えた。
しばらく沈黙した。
オッサン「……あの五人、どうなるんだろうな」
マスター「知らん」
おねーさん「もう出発してるかもしれないにゃ」
オッサン「早く言ってやれよ」
帝
小さなバー。名前は《N+2》。
オッサンがカウンターで酒を飲んでいた。
おねーさんは椅子の上で丸くなっている。
マスターはグラスを拭いていた。
突然、店の床が光った。
オッサン「またか」
マスター「今度は何だ」
おねーさん「来るにゃ」
光が消えた。
かぐや姫が立っていた。
沈黙した。
オッサン「また来たの?」
かぐや姫「はい」
マスター「五人か」
かぐや姫「いいえ」
おねーさん「難題の品を本当に持ってきた人がいたにゃ?」
かぐや姫「それも違います」
オッサン「じゃあ何?」
かぐや姫「帝からお誘いがありました」
沈黙した。
オッサン「……前より面倒なの来たな」
マスター「ああ」
おねーさん「それで、どうしたいにゃ?」
かぐや姫「お断りしたいです」
オッサン「じゃあ断れば――」
途中で止まった。
マスター「どうした」
オッサン「いや。前回それ言ったなと思って」
おねーさん「少し学習したにゃ」
オッサン「でも、今回は自分がどうしたいか分かってるんだよね?」
かぐや姫「はい」
オッサン「帝のところへ行きたい?」
かぐや姫「行きたくありません」
マスター「そこは明確だな」
オッサン「じゃあ、前回より簡単じゃない?」
マスター「そうか?」
オッサン「本人の意思は決まってる。前回みたいに、五つの難題で何を測ってるのか分からないとか、Second bestなのか拒絶なのか分からないとか、そういう問題がない」
おねーさん「相手が帝にゃ」
オッサン「そこなんだよな」
***
マスター「普通の求婚者と何が違う」
オッサン「権力」
おねーさん「断る相手によって、同じ『嫌です』でも意味が変わるにゃ」
オッサン「いや、意味は同じじゃない?」
おねーさん「言葉の意味は同じにゃ」
マスター「結果が違う」
オッサン「ああ」
かぐや姫「五人の方々なら、私が断れば、それで済みます」
マスター「帝は?」
かぐや姫「分かりません」
オッサン「断ったら罰せられる?」
かぐや姫「そうなるとは限りません」
オッサン「じゃあ大丈夫じゃん」
マスター「限らない、だ」
オッサン「……そうか」
おねーさん「何もされないことと、何もされないと分かっていることは違うにゃ」
オッサン「相手がどう出るか分からない」
マスター「しかも、相手の方が圧倒的に強い」
オッサン「なるほどな。断る自由が形式上あることと、安心して断れることも別なのか」
かぐや姫「はい」
***
オッサン「でもさ、帝本人が『嫌なら断っていい』って言えば解決しない?」
マスター「言ったとして、お前なら信じるか」
オッサン「相手が帝か……」
おねーさん「断った後も、その人が帝であることは変わらないにゃ」
オッサン「そうだよな」
マスター「選択肢が二つ書いてあるだけでは、自由な選択とは限らん」
オッサン「断るって選択肢が存在することと、それを選べることは別か」
おねーさん「選んだ後のことまで含めて選択するにゃ」
かぐや姫「だから、どう断ればよいのか迷っています」
オッサン「また難題出す?」
かぐや姫「それは、やめた方がよいと言われました」
オッサン「そうだった」
マスター「お前が言ったんだろ」
***
オッサン「本人の意思は決まってる。でも、結果は決められない」
おねーさん「相手も意思を持ってるにゃ」
オッサン「あ」
マスター「当たり前だ」
オッサン「そうなんだけどさ。人生相談って、自分が何を選ぶかばっかり考えがちじゃん」
マスター「他人は制御できん」
オッサン「しかも今回は、その制御できない他人が帝」
おねーさん「だから困ってるにゃ」
***
オッサン「それでも、最終的には断るしかないんじゃない?」
かぐや姫「そう思います」
オッサン「怖くても?」
かぐや姫「はい」
オッサン「帝がどうするか分からないままでも?」
かぐや姫「はい」
マスター「なら、答えは出てるな」
床が光った。
かぐや姫「どうやら、戻るようです」
オッサン「今回は役に立った?」
かぐや姫は少し考えた。
かぐや姫「分かりません」
オッサン「またそれ?」
かぐや姫「でも、お断りします」
おねーさん「前回より一つ多く決まったにゃ」
かぐや姫「はい」
光が強くなった。
かぐや姫の姿が消えた。
しばらく沈黙した。
オッサン「帝、大丈夫かな」
マスター「何が」
オッサン「ちゃんと諦めてくれるかな」
おねーさん「それは、かぐや姫には決められないにゃ」
オッサン「俺にも決められない?」
マスター「当たり前だ」
月への帰還
小さなバー。名前は《N+2》。
床が光った。
オッサン「え?」
おねーさん「早いにゃ」
マスター「今度は何だ」
光が消えた。
かぐや姫が立っていた。
オッサン「帝、諦めなかった?」
かぐや姫「いいえ。帝のことではありません」
オッサン「じゃあ何?」
かぐや姫「月から迎えが来ます」
沈黙した。
かぐや姫「帰りたくありません」
オッサン「じゃあ、帰らなきゃいいじゃん」
かぐや姫「そういうわけにはいかないのです」
オッサンは黙った。
マスター「また最初に戻ったな」
おねーさん「今度は難題を出す相手もいないにゃ」
***
オッサン「帝のときは、怖くても断ることはできた」
かぐや姫「はい」
おねーさん「今回は、選ぶこと自体ができないにゃ?」
かぐや姫「はい。帰らなければなりません」
マスター「なら、意思の問題ではないな」
オッサン「帰りたくない。でも帰るしかない」
かぐや姫「はい」
オッサン「帝には知らせるの?」
かぐや姫「文を残します。それと、不死の薬を」
オッサン「不死の薬?」
かぐや姫「はい」
オッサン「帝のところには行きたくなかったんだよね?」
かぐや姫「はい」
オッサン「でも、不死の薬は渡す?」
かぐや姫「はい」
オッサン「嫌いだったわけじゃない?」
かぐや姫「大切な方です」
オッサン「じゃあ――」
おねーさん「大切な方にゃ」
オッサン「……はい」
マスター「今度は何を勝手に決めるところだった」
***
オッサン「でも、不死か」
マスター「何だ」
オッサン「帝が薬を飲んだら、ずっと生きるんだよな」
おねーさん「そうにゃ」
オッサン「だったら、時間はいくらでもある」
かぐや姫「何の時間ですか?」
オッサン「人間が月へ行けるようになるまでの時間」
かぐや姫が顔を上げた。
かぐや姫「人間は、月へ行けるようになるのですか?」
オッサン「なる、じゃない。もう行った」
かぐや姫「……月へ?」
マスター「ああ」
おねーさん「人間が月面を歩いたにゃ」
かぐや姫は黙った。
オッサン「だから、今は無理でも、ずっと無理とは限らない」
かぐや姫「では、いつか……」
オッサン「少なくとも、人間は月まで行ける」
かぐや姫は少し笑った。
床が光り始めた。
かぐや姫「それだけ分かれば、十分です」
オッサン「そう?」
かぐや姫「はい」
光が強くなった。
かぐや姫の姿が消えた。
***
三人は、しばらく黙っていた。
オッサン「いいことしたな」
マスター「そうか」
オッサン「しただろ。人間は本当に月まで行ったんだから」
マスター「かぐや姫には会ってないぞ」
オッサン「……あ」
おねーさん「どうしたにゃ?」
オッサン「月って、住めないよな」
おねーさん「それは、今の私たちだから知っているにゃ」
オッサン「あ」
マスター「当時の人間は月面を知らない」
オッサン「そうか。じゃあ、なんで月だったんだろう」
マスター「何が」
オッサン「かぐや姫の帰る場所。蓬萊でもよかったはずだろ」
おねーさん「蓬萊なら、地上のどこかにあると思えるにゃ」
オッサン「そう。船で探せそうな気がする。月は違う」
マスター「当時は、な」
オッサン「逆にシリウス星系の惑星から来ました、じゃ駄目なんだよ」
マスター「天狼星と言い換えたところで、当時の人間に何のことか分からん」
おねーさん「遠いという実感も持てないにゃ」
オッサン「月は見える。誰でも知ってる。でも届かない」
マスター「人間の世界の外を置くには都合がいいな」
オッサン「うん。外部の象徴としてはすごく強い」
***
マスター「そして、人間はそこへ行った」
オッサン「そうなんだよ」
おねーさん「でも、かぐや姫はいなかったにゃ」
オッサン「……だったら、さっき教えたこと、意味ないじゃん」
マスター「月へ行けることは教えた」
オッサン「でも会えない」
マスター「だから?」
オッサン「……じゃあ、次を探す?」
おねーさん「何を探すにゃ?」
オッサン「そもそも、かぐや姫の言ってる『月』って、俺たちが行った月と同じなのか?」
マスター「月まで行かなければ、その問いも出なかった」
オッサン「……モノリスか」
マスター「何が」
オッサン「『2001年宇宙の旅』。辿り着いたところに答えがあるんじゃない。辿り着くと、その先が始まる」
おねーさん「月が終点じゃなくなったにゃ」
オッサン「月へ行く。いない。じゃあ、どこにいる。そもそも、かぐや姫の言う月って何だ。次の目標ができる」
マスター「ああ」
オッサン「でも、それをやるには時間が要る」
沈黙した。
オッサン「あ」
おねーさん「何にゃ?」
オッサン「不死の薬」
マスター「何だ」
オッサン「六つ目だ」
おねーさん「何がにゃ?」
オッサン「難題だよ」
***
オッサン「五人には、かぐや姫が品物を持ってこいと言った」
マスター「ああ」
オッサン「帝には逆なんだ。かぐや姫の方が品物を渡した」
おねーさん「不死の薬にゃ」
オッサン「それを飲めば、時間だけはある」
マスター「月まで行って、いなくても」
オッサン「次を探せる」
おねーさん「そこにもいなかったら?」
オッサン「また次を探す」
マスター「いつまでだ」
オッサン「見つかるまで」
マスター「見つからなければ」
オッサン「……終わらない」
おねーさん「不死だからにゃ」
オッサン「これだ」
マスター「何が」
オッサン「五人には、終わりのある難題を出した。でも帝には、終わるかどうかも分からない難題を出したんだ」
マスター「かぐや姫がそう考えた証拠はない」
オッサン「分かってる。こう読むことができる、だよ」
おねーさん「不死の薬そのものが、試練を始めるための道具だったにゃ?」
オッサン「そう。『月まで来い』じゃない。『私を見つけろ』だ」
沈黙した。
マスター「ひどい試練だな」
オッサン「五人より?」
マスター「終わりがない」
***
オッサン「でも帝、薬を焼いたんだよな」
マスター「ああ」
おねーさん「飲まなかったにゃ」
オッサン「じゃあ、試練を受けなかった」
マスター「そうなるな」
オッサン「なんでだよ。かぐや姫を大切に思ってたんだろ」
少し考えた。
オッサン「かぐや姫がいない世界で、自分だけ永遠に生きても仕方がないと思ったのかな」
おねーさん「帝に聞かないと分からないにゃ」
マスター「だが、少なくとも薬は飲まなかった」
オッサン「じゃあ、試練を受けなかった」
マスター「それで志がないことになるか?」
オッサン「……ならないな」
マスター「また失敗したな」
オッサン「誰が?」
マスター「評価系が」
オッサン「俺が作ったんじゃないぞ」
マスター「六つ目はお前が作った」
オッサン「……そうだった」
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