ファンタジー編 第二話 旅立ち
半年が過ぎた。
三人は剣を習った。
槍も習った。
弓も習った。
格闘術も習った。
魔法も習った。
面白そうなものは、とりあえずやってみた。
そして、かなり真面目にやった。
***
王宮の訓練場。
王、騎士団長、宮廷魔術師が三人を見ていた。
王「半年が過ぎた」
オッサン「早かったな」
マスター「ああ」
おねーさん「面白かったにゃ」
王「そろそろ魔王討伐へ向かってもらいたい」
オッサン「いいよ」
王「その前に、そなたたちの力を確認しておきたい」
オッサン「力?」
騎士団長「どれほど強くなったのか、ということです」
オッサン「分からない」
騎士団長「……分からない?」
マスター「分からんな」
おねーさん「分からないにゃ」
騎士団長「では、三人の中で誰が一番強いのです?」
三人は顔を見合わせた。
オッサン「知らない」
マスター「比べたことがない」
おねーさん「ないにゃ」
騎士団長「気にならなかったのですか?」
オッサン「何が?」
騎士団長「誰が一番強いかです」
オッサン「なんで?」
騎士団長「……」
王「では、模擬戦をしてみてはどうじゃ」
オッサン「何のために?」
王「強さを測るためじゃ」
マスター「条件は」
騎士団長「条件?」
マスター「剣だけか」
おねーさん「魔法は使っていいにゃ?」
オッサン「距離は?」
マスター「場所はここか」
おねーさん「屋内なら使えない魔法もあるにゃ」
オッサン「勝ちって何?」
騎士団長「相手を戦闘不能にすることです」
オッサン「蘇生魔法って、あったっけ?殺しちゃまずいよね」
騎士団長「駄目です!」
オッサン「じゃあ本気で使えない技があるじゃん」
マスター「実戦条件とは違うな」
おねーさん「それで魔王と戦えるか分かるにゃ?」
騎士団長「……」
マスター「降参したら?」
騎士団長「それでも、勝敗は決められます」
オッサン「じゃあ俺、痛かったらすぐ降参するよ」
騎士団長「なぜです!」
オッサン「痛いの嫌だから」
マスター「俺もだな」
おねーさん「私もにゃ」
騎士団長は黙った。
王「別の方法はないのか」
騎士団長「実戦に近い試験を行うしか……」
そのときだった。
城壁の向こうから、大きな音が響いた。
兵士が訓練場へ駆け込んできた。
兵士「大変です! 城下に大型の魔獣が侵入しました!」
騎士団長「何!」
王「被害は!」
兵士「まだ確認できておりません!」
オッサン「魔獣?」
兵士「はい!」
オッサン「見たい」
騎士団長「危険です!」
オッサン「俺たち、魔王と戦いに行くんだよね?」
騎士団長「……」
マスター「行くか」
おねーさん「行くにゃ」
***
城下の広場に、大きな魔獣がいた。
牛ほどの頭。
太い四本の脚。
背中には硬そうな甲殻。
兵士たちが周囲を取り囲んでいた。
オッサン「でかいな」
マスター「ああ」
おねーさん「初めて見るにゃ」
騎士団長「近づかないでください!」
オッサン「これ、倒していいの?」
騎士団長「もちろんです!」
オッサン「分かった」
オッサンは剣を抜いた。
マスターも剣を抜いた。
おねーさんは、うみゃうみゃ呟いている。
魔獣が突進した。
閃光。
魔獣は、その場に崩れ落ちた。
沈黙した。
オッサン「……」
マスター「終わったな」
おねーさん「終わったにゃ」
オッサン「もうちょっと見たかった」
騎士団長は何も言わなかった。
***
王宮へ戻った。
王「十分じゃ」
オッサン「何が?」
王「そなたたちには、魔王と戦うに足る力がある」
オッサン「なんで分かるの?」
王「今の魔獣を一撃で倒したではないか!」
オッサン「魔王とあれ、どっちが強いの?」
王「……」
マスター「比較したことはあるのか」
騎士団長「ありません」
おねーさん「じゃあ分からないにゃ」
王「しかし!」
オッサン「まあいいじゃん」
王「……よいのか?」
オッサン「外に出られるんだろ?」
王「もちろんじゃ」
オッサン「この国、まだ王都しか見てないんだよ」
マスター「旅は面白そうだな」
おねーさん「いろいろ見たいにゃ」
王「おお……!」
王は立ち上がった。
王「ついに覚悟を決めたか!」
三人は顔を見合わせた。
オッサン「まあ、そういうことでいいよ」
王「勇者たちよ! 魔王を討ち、この国に平和を取り戻してくれ!」
オッサン「行ってきます」
マスター「ああ」
おねーさん「行ってくるにゃ」
こうして三人は、魔王城へ向かった。
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